「結局、どの素材が一番いいんですか」
店頭で一番よくいただく質問です。そして、正直にお答えすると、この問いには明確な答えがありません。
答えがない理由をお話しするほうが、無理にひとつを選んでおすすめするよりも、きっとお役に立てると考えています。
それぞれの繊維には、得意なことと引き換えの性質があります
この一覧を見ると、「一番いい素材」を探すこと自体が、少し難しいことなのだとお分かりいただけるかもしれません。素材の優劣ではなく、どの場所でどう活かすかの問題だからです。
だからこそ、一枚の寝具に何種類もの素材を合わせます
ベトナムの夏、背中に直接触れる面に必要なのは、熱をすっと逃がして湿気をこもらせないことです。ここにはナイロンを使っています。乾きがとても速いので、朝洗って夕方にはまたお使いいただけます。
マットレスプロテクターの表面に必要なのは、逃がすことではなくしっかり吸うことです。ここにはレーヨンを使います。濡れたときに弱くなる性質は、洗う際の手間で補えます。脱水時間を短めにして、平らに干していただければ充分です。
枕や敷きパッドの中材に必要なのは、つぶれずに体を支え続けることです。ここにはポリエステルの極細綿を使います。湿気をほとんど吸わないという性質が、中材においては水を含んで重くならないという長所に変わります。
「ポリエステルは吸わない」というひとつの事実も、表地では欠点になり、中材では長所になる。これが素材選びの本当の面白さです。
私どもの商品の弱点もお伝えします
ナイロンの表地は、どうしても毛玉ができます。しかも繊維自体が丈夫なため、毛玉が根元から切れずに生地に残ってしまいます。綿の毛玉がお洗濯のたびに少しずつ落ちていくのとは異なります。
「毛玉ができません」とは申し上げられません。素材の本来の性質に反することを書くわけにはいかないからです。私たちにできるのは、発生を遅らせることです。裏返して洗う、タオルやファスナーのある衣類と分け、弱い水流を選ぶ。摩擦を減らすことで、毛羽立ちをゆるやかにできます。
レーヨンのカバーは、水に濡れているときが一番デリケートな状態です。強い脱水は、生地が最も耐えられないタイミングで引っ張ってしまうことになります。
ベトナムでは、温度よりも湿度のほうが体に響きます
五月から十月にかけて、空気は水分をほとんど受け取れない状態になります。汗が蒸発しにくいため、体温がなかなか下がりません。同じ二十七度でも、日本の二十七度とは肌で感じる暑さが違います。
この気候では、ひんやり感よりも「湿気を溜め込まない」ことのほうが効果的です。どんな生地もお部屋の温度より冷たくなることはありません。生地にできるのは、湿気を中に抱え込まないことだけです。
柔軟剤についてもひとつだけ。柔軟剤は繊維の表面に薄い撥水膜を残します。肌ざわりは柔らかくなりますが、寝具において今必要としている働きを妨げてしまうことがあります。
お選びになるのはお客様ご自身です
私たちにできるのは、それぞれの繊維が何を得意とし、何と引き換えにしているかを包み隠さずお伝えすることだけです。そのうえで、どれがご自身の眠りに合うかは、お客様のお体が一番よくご存じだと思っています。
実際に触れて確かめたいときは、いつでも倉庫にお越しください。生地の上に手を置いたらすぐ離さず、十五秒ほどじっとそのままにしてみてください。最初のひんやり感はどの生地にもあります。ぜひそのあとの手のひらの感覚を、確かめにいらしてください。
JUDY DRAP
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